五條悟と時渡るJK〜過去いま運命論〜(dream)

□09-脅迫とJK
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「これはアミの生命線だから、無理だってば!」

 アミはウサタンポシェットを抱きしめて、ごじょーさとるを睨んだ。

「なんでごじょーさとる、そんなにシツコイの? マジでウザいんだけど」
「お前が持ってるジュブツは、そのまま放置していいもんじゃねーんだよ」
「アミから言わせたら、お子ちゃまに渡す方が危ないし」
「俺は天才だからいいんだよ」
「いーい? ごじょーさとる! 先輩からのちゅーこくね!」

 ビシィッ!と、アミはチュッパチャップスをごじょーさとるへつき付ける。

「ごじょーさとるも、“設定”は違うけどこういうヘンテコリンな世界で生きてるよね? 自分の設定が正しいって思いこまないで、お互いの設定を尊重し合って、なるべく深入りしないのが平和な世界への第一歩なんだよ。わかった?」
「意味分かんねぇ、何言ってんだ?」

 呆れた顔をしてごじょーさとるもベンチから立ち上がる。
 アミと向き合うと、食べ終わったチュッパチャップスの棒を後ろにポイ捨てした。いけないんだー。

「ま、従わないなら、力づくで従わせるだけだな」
「できるの? ごじょーさとる、アミより非力なくせに」

 アミも力は強くない。だけどプリクラでアミが抱き付いた時、ごじょーさとるはアミの事を振りほどけなかった。
 純粋な力比べだけなら、9歳の小学生より、15歳のお姉さんのアミの方が勝ってる。

「不思議な力も持ってるかもだけど、それだってアミにはきかないよ??」

 アミは余裕ありまーす、って笑顔を作る。――実は、これハッタリなんだけどね。

 アドバンテージで言えばアミの方が圧倒的に見えるけど、アミ、対人戦苦手なの。
 それに気づかれないようにアミは自信満々でーす!って感じで笑っておく。

「……たしかに、俺のムカゲンジュジュツはアミにはきかないみたいだな」
「あはは! でしょ?」

 むかげんじゅじゅちゅ、ってなに?って心の中で疑問に思いつつ、馬鹿にするような笑顔に変える。

「どーせ、アミには勝てないんだから、ごじょーさとるも変なこと言ってなッ」

 ゴシャァッッ!!!――乾いた炸裂音がアミの鼓膜を震わせた。

 カーカー、カラスの鳴き声がうるさく鳴いて、ミシミシ何かが壊れる音が聞こえて、気が付いたときには後ろから風。

ドシーンッ!――重たい音の後に、葉っぱと砂埃が舞い上がる。

 振り返れば後ろには、公園に植えられた木が倒れてた。
 数メートルずれていたらアミに直撃してたんじゃないかなってくらい近い位置で。
 ビックリしすぎてチュッパチャップスが手から落ちる。

 倒れた木の根元を見たら、何かに抉られたような跡があってアミは嫌な予感がした。

「これ、ごじょーさとるがやったの? “しんりんはかい”じゃん。……ウケる」
「アミ、オマエの弱点。物理だろ?」

 冷めた声でごじょーさとるは断言した。

「俺のジュツシキはアミに通じないし、力でも勝てないけど、“こんな風に”ジュツシキで物質をアミにあてる事はできる」

 ごじょーさとるはキラキラした目を細めて言葉を続ける。

「アミに触られなければ、俺はジュツシキを行使できる。シバリか何か知んないけど、オマエ走れないみたいだし、鬼ごっこと殺し合いになって有利なのは俺の方だぜ」

 ポケットに両手を入れて、ごじょーさとるは下からアミを睨んできた。

「今のは挨拶だ。俺の言うことを聞かねぇんだったら、……次は、“当てる”」
「……」

 ごじょーさとるの脅し文句に、アミはどーしようか考える。

 ごじょーさとるの言ってる事は全部あってる。
 アミはバケモノには強いんだけど、実際に触れる人間やバケモノなんかは苦手。
 だから基本的にそうなった時は別の子が攻撃担当して、アミは援護に回る。

 ただ、アミだって伊達に長くヒーローをやってる訳じゃない。
 “もしも”本当に殺し合いになるんだったら、奥の手くらい持ってる。

――でも、アミ、案外、ごじょーさとるを気にいってるんだよねぇ。
  
 生意気だし、口も態度も悪いし、自分の意見ばっかりで我が儘だけど、アミのやりたい事になんだかんだ付き合ってくれた。
 バケモノのエサの回収だって、アミから盗む機会はあっただろうけど、無理やり盗ろうとはして来なかった。

 それに、ヒーローは長生きできない。
 どうせ大人になる前に死んじゃう。

 他の施設の子とはいえ、ごじょーさとるを殺したりケガさせる事は、アミは嫌だった。

――うーん、仕方ないかぁ……

 アミは考えをまとめて、ごじょーさとるを見る。

「分かった。アミの負け」


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